不本意な役を買っていないか?

いらっしゃいませ。
今回は女性向けの記事となります。
あなたは「良い人なんだけど、なんとなく好きになれない」という相手が居て、こんな風に感じてしまう自分は性格が悪いのではないかと悩んだことはないでしょうか?
その理由は一概には言えませんが、もしかすると不本意な「相対的ポジショニング」のせいかもしれません。
相対的ポジショニングって?
これは私が勝手に作った言葉です。
相対的ポジショニングについて、架空の女性達を例に、説明していきます。
あるところにAさんとBさんという二人の女性が居ました。
Aさんは人に嫌われる事への過剰な恐れが有るので意見を言う事が苦手です。
いつもニコニコと笑顔で居る事が、人としての最良の在り方だと思っています。
そのAさんと友人のBさん。
ある日二人で観劇に行く為に道を歩いていると、男性がAさんに声をかけてきました。
ナンパです。
観劇に行くのですから答えはNO一択です。
Aさんはとにかく波風を立てたくないので、ニコニコと笑顔です。
しかしBさんの方を何度も見てきます。
Bさんと男性の顔を交互に見てニコニコ笑顔で何も言わないAさん。
Bさんが「用事有るんで。」と男性に言うと、男性は「あなたじゃなくてこの人に声をかけているんだ」と反論してきました。
それでもAさんは何も言わずに笑っています。
このままではキリが無いので、Bさんは「行こう」とAさんに言って強引にその場を切り上げました。
後ろから男性の呟きが聞こえました。
「うざっ。しゃしゃり出てくんなよ」
Aさんは歩きながらBさんに言いました。
「凄いねぇ!私ああいうの何も言えないから、Bさんみたいにハッキリ言える人本当に凄いと思う~!本当凄い!強いよね!」
Bさんはとても嫌な気分になりました。
※このストーリーはフィクションです。
これを読んで、Bさんは本来強いからハッキリと言えたのだと感じますか?
真実は単に「Aさんが放棄した役割をBさんが買ってあげただけ」です。
このストーリーの中で、Aさんは「笑顔で良い子」に徹する事に成功しています。
それはBさんが「ハッキリと断るというリスクの高い役」を買ってくれた為です。
「そんなの放っておけば良かったのでは?」と感じる人も居ると思いますが、Aさんを置いてBさん一人で劇場に向かうというのはあまり現実的な人間関係ではありません。
今回はナンパで例えましたが、会社で、学校で、合コンで、プライベートな人間関係で・・・
こういった事はどこででも見られます。
Bさんが嫌な気持ちになったのは、本来であれば買わなくても良かった役割を買う事になり、結果的にうとましがられた上に、Aさんからは「恐らく女性の多くが大して嬉しくないであろう褒め言葉(?)」を言われた為です。
つまり、Aさんが「きちんと意思表示する」という役割を放棄したので、損な役回りとなったわけです。
しかし、これを実際に言葉で誰かに伝えても共感してもらうのは少し難しいです。
何故かというと、Aさんは「能動的に悪い事」をしていないからです。
周りから見ると、やはりBさんが気の強いハッキリと物申せる性格の女性に見えるだけで、Bさんの心の中のモヤモヤを解ってくれる人は恐らく少ないでしょう。

弱い子ポジションに居座る人は結局のところ神経図太い
Bさんのように不本意な役を買ってあげる女性というのは気遣い屋で優しい人が多いです。
しかし多くの人は人の表面的な物言いや物腰で性格を判断してしまいます。
その為、「私が言ってあげないと可哀想」だとか、
「誰かが言わなければならないなら、私が言おう・・・」と考える人は、こう見られます。
好きでやっているんでしょ?
好き好んでやっていると思われると、周りからは「あの人に任せておけば平気」と思われ、結果的にどんどん不本意な役回りを買う羽目になります。
そこで一つ、気付いて欲しい事が有ります。
それが弱い子ポジション、良い子ポジションに居座る人は結局のところ神経図太いという事です。
不本意な役を買ってあげる人は、空気を読んで思い遣りを発動させてリスクを取っています。
では、逆の人は?
誰にも「良い子ポジション」を譲らず、他の女性に不本意な役回りを買ってもらっている女性は、どういう人なのでしょうか。
こういう方々は、大抵こう自己申告します。
「私、気が弱くてハッキリ言えないの」
しかしむしろ逆だと思います。
こういう方々はあくまでも自分を守りたいのであって、良い子の椅子に座り続けてどかないという強靭なメンタルをお持ちなので全く弱くなどありません。
他の女性が不本意な役回りを買っていると気付いているならばその神経の図太さは相当のものですし、気付いていないのであればかなり鈍感な人です。
どちらにしろ繊細さとは程遠いのです。
しかし、です。
これを見抜ける人はほとんど居ないと思った方が良いです。
特に男性は、ハッキリと主張しない、リスクを取らない女性の方が、優しい良い子に見えたりするのです。
ですから不本意な役回りを買ってあげても誰も褒めてくれない事も多いでしょう。
リスクを取らない人達も、ある意味では自分最優先なのです。
あなたもそうで良いのです。
これが会社であると、こう思う女性も少なくないと思います。
「でも、誰かが言わないと」
そう感じるのであれば、その誰かに最適任なのは自分なのかを考えてみてください。
他の人の課題なのではないのか?
チームの課題なのではないのか?
その上で自分が不公平感を感じないレベルの力を添えて差し上げれば良いだけです。
課題の分離という言葉を聞いたことが有る方もいらっしゃると思います。
アドラー心理学が流行ってから、あちこちで見聞きするようになりました。
他者の課題と自分の課題を分けて考えるという事です。
先のナンパの例で有れば、例えば「どうするの?」とAさんに聞くにとどめるだけでも良いのです。
それでも何も言えないのであれば、「Aさんの課題」から「私たちの課題」に見方を変え、男性に向かって発言しても良いのですが、この場合は「あなたが言えないから言ってあげた」のではなくて、あくまでも自分が「私たちの課題」にすると決めて介入したのだと考える事をオススメします。
誰かが放棄した役は誰かが担っている
でも書いたのですが、誰かが放棄した役割は誰かが担っているものです。
ですから自分自身が誰かの放棄した役割を担っている事も有れば、逆も有ります。
私事で恐縮ですが、私の場合は仕事の場において「皆が言いにくい事をハッキリ言う」というポジションになる事が多い人生でした。
しかしいつも心の中には大きな不満が有りました。
私も好き好んで発言していたのではないので、その一面だけしか知らない人に自分の全てを知ったような気になられる事が不快でしたし、不本意でも有りました。
そこで試しにある時から「何も言わない」という姿勢を取ってみる事にしました。
するとやはり周囲の人の中から、私が担っていたような役回りを買う人が現れました。
周りは疎ましく思っていたようで、陰口も聞きました。
誰も自らのポジションを振り返ろうとはしていないようでした。
「自分はいつもニコニコして波風を立てない事を最優先している」という人は、「言いにくい事を言ってくれている人が居るからそう出来ている」のです。
逆に「ハッキリ言う事で全員の待遇向上や課題を解決出来ているが、場を凍りつかせたりピリつかせる」という人は、「誰の事も責めない姿勢で場の雰囲気を和らげてくれる人が居るから殴り合いや罵り合いに発展せずにいられる」のです。
自分がどんな役を買っているのかと同じくらい、どんな役を周りが引き受けているのかを考えるのは大切な事です。
何故なら、自分が放棄している役回りは、他の人にとってもあまり買いたくないものである可能性が高く、ここに気付かずに居ると知らず知らずに嫌われたり人を傷つけていたりするからです。
特に「女性から恨まれる女性」はここに無頓着な人が多いなという印象です。
ただですね、いくら周囲がこの辺りに無頓着であっても、自分が買った役回りに対して、
「あの人のせいで」だとか「私の方が損をしている」という黒い気持ちが生まれるのであれば、それはキャパオーバーですからやめましょう。
この黒い気持ちは、いじけ、ひねくれ、拗ね(すね)、恨み、不公平感へと変わっていきます。
こじらせるとマウンティングをしたり嫌味を言うようになりかねません。
こういった構造に気付いていない人は大勢居るので、周囲から見るとほとんど逆恨みですし意味が解らないのです。
こんな風になるくらいであれば、不本意な役回りなど買わなくて良いのです。

あなただから出来る事
ここまで読んで下さったあなたであれば、誰もが放棄した役回りを買っていて苦しんでいる人にも気付けると思います。
そうすれば、無理なく分散させていく提案をするなり、今までとは違ったアプローチが出来るのです。
また、自分の課題は自分で担うという自立心を人から奪わない事も時には必要です。
「何か助けは居る?」と聞いてみて、その上で相手がきちんと意思表示すれば、無理のない程度で介入すれば良いのです。
特に「ハッキリ言えない」というのはその人の課題ですから、自分を犠牲にしてまでリスクの有る役回りを買ってあげようなどとは思わなくても大丈夫なのです。
不本意な現実を作っているのはいつも自分です。
「やりたくもない役ばかり」なんて感じるのであれば、無理しない方向にシフトしてみるのも良いのではないでしょうか。